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器械分娩とは

2024.09.25

器械分娩は、分娩がスムーズに進まない場合や、妊婦さんや赤ちゃんの状態が危険な場合に行われる医療介入の一つです。吸引分娩と鉗子分娩の2種類があります。当院でご出産をご検討いただいている方はぜひご一読下さい。

  • 吸引分娩: 吸引カップを赤ちゃんの頭に装着し、吸引圧をかけながら赤ちゃんを引き出します。分娩が進まない場合や赤ちゃんを迅速に出す必要がある場合に使用されます。
  • 鉗子分娩: 鉗子(大きなスプーン状の器具)で赤ちゃんの頭を挟み、引き出す方法です。吸引分娩と同様、分娩が進まない場合に行われます。
  • 当院では、一般的なネーゲリ鉗子だけでなく、回旋異常(赤ちゃんの頭の向きは正常な方向ではない)にも対応できるキーラン鉗子も行うことができます。

器械分娩は、必要でなければ絶対に行わない手技です。急速遂娩(極力早く赤ちゃんを生まれさせてあげる)の手技の一つで、器械分娩もしくは緊急帝王切開に分かれます。腟からあかちゃんをだせそうな場合は器械分娩、そうでない場合は緊急帝王切開となります。

吸引分娩と鉗子分娩の比較

簡単にお伝えすると、鉗子分娩と比較し、吸引分娩はお母さんの合併症のリスクは低いですが、赤ちゃんの合併症のリスクは高くなります。鉗子分娩はその逆になります。

具体的には

  • 経腟分娩の成功率は鉗子分娩の方が高い。吸引分娩では、引っ張る力(牽引力)が弱いため妊婦さんのおなかを押す(子宮底部圧迫法、クリステレル)方法を同時に行うことが多い。
  • 吸引分娩では回旋異常でも牽引可能だが、一般的なネーゲリ鉗子では回旋異常に対応できない場合がある。
  • 鉗子分娩は吸引分娩と比較し産道の傷が大きくなりやすく、産後に排便障害等を引き起こす可能性がある。
  • 吸引分娩は頭血腫、帽状腱膜下血種の発生率が鉗子分娩と比較し高い、特に帽状腱膜下血種は重篤な合併症で新生児死亡にいたる可能性がある。

まとめ

吸引分娩か鉗子分娩は一長一短ですが、鉗子分娩の成功率の方が高いです。引っ張る力が弱い吸引分娩の場合、同時に行われることが多い子宮底部圧迫法(クリステレル法)はお母さんのろっ骨骨折や肝臓の破裂の発生も報告されておりガイドラインでも慎重に行うことが明記されています。また、産科医として鉗子分娩ができない場合、帝王切開の選択をしがちになることや、吸引分娩で過度な回数の牽引を行い赤ちゃんに重篤な合併症を引き起こす場合があります。一方で鉗子分娩の赤ゃんを出す力は強力ですが、産道の裂傷を大きくなり産後の生活に支障をきたす場合があったり、一般的なネーゲリ鉗子では赤ちゃんの向きが悪い(回旋異常)と対応できない場合があります。そのため回旋異常は、吸引分娩のみの対応となりしばしば難産になりがちです。当院では一般的なネーゲリ鉗子だけではなく回旋異常にも対応できるキーラン鉗子も扱うことができるので母児ともにより安全な経腟分娩を行うことができます。

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